教科横断型授業

授業実践「生物基礎」×「英語コミュニケーションⅠ」

●授業者:松下愉久教諭(理科)/ 亀岡靖典教諭(英語)
●対象:1年生普通科「生物基礎」/「英語コミュニケーションⅠ」
●日時:令和6年3月19日(火)  生物基礎
●内容:生物基礎・遺伝
英語コミュニケーションⅠ・Lesson 6 Could We Have a Real Jurassic Park? (桐原書店)
生物基礎 第2部 遺伝子とその働き (啓林館)
本授業の目標は、英語・Lesson 6「太古の恐竜を現代の世界に生き返らせることができるのか」という既習テーマに対して、生物基礎の遺伝子とその働き「DNA抽出実験」を行った。「恐竜のクローンを作り出すことは科学的に可能なのだろうか」をという問いに対して、より深く考察して、答えを導く訓練として、授業をデザインした。まず、ゲノムDNAを用いたクローン技術について学びを深めた上で、永久凍土で見つかったマンモスからDNAを抽出の可否について探究した。具体的には、4人で1班を作り、英文で示した実験の手順①~⑩を行い、凍らせたバナナからもDNAが抽出できることを学び、永久凍土で見つかったマンモスからもDNAを取り出せるという答えを導き出すことができた。その後、各班の実験結果をまとめ、近畿大学においてマンモスのゲノムDNAを用いてクローンを生み出す研究が実際に行われていることなどを学ぶ機会を与えた。さらに、ハーバード大学のマンモス復活へのチャレンジを参考にしながら、恐竜復活の可能性について考察した。今回、英語の授業で簡単にしか触れられなかった内容を、生物基礎の実験や最新の研究報告を基に深掘りし、思考力、洞察力を向上させ、科学的アプローチを通して、生徒自身で答えを導き出す思考のトレーニングを行うことができた。
授業後のHIMAWARIルーブリック(クロスカリキュラム特別仕様)の感想から、「英文での手順による実験のため、うまくいっているのかどうか、若干の緊張はあったものの実際にDNAを採取した時には驚いた」、「得意な教科と不得意な教科を組み合わせることで苦手な教科もがんばろうという意識が芽生えた」、「実験のために英文を読むことは、いつもより理解しようと自主的に取り組もうとした」、「実際に実験で使用する英単語や文章を読むことで、英単語の定着もはやい」、「実際に体験をするとその分野を学ぶことに対する意欲が高まり、2つの科目が融合したことに面白さを感じだ」、「英語で学んだことを身近な物で実験することで理解が増し、内容を覚えられやすい」、「生きているDNAだったら凍っていても取り出せるという実験結果と現在の近大のマンモスを復活させる研究から恐竜が実際に復活するという希望が見えた」等のコメントがあった。

 

授業実践「数学」×「英語」

●授業者:中村清寛 教諭(数学科)/ 亀岡靖典 教諭(英語科)
●対象:1年生普通科「数学A」/「英語コミュニケーションⅠ」
●日時:令和6年2月1日(木)
●内容:数学A・一次不定方程式
英語コミュニケーションⅠ・修学旅行でお土産を買う状況での対話と比較表現

文理両面から「数学と人間の活動との関わり」と「Real-Life styleでの比較表現」を学ぶことに主眼を置いて授業をデザインした。具体的には、1ヶ月後の修学旅行でお土産を買う状況、すなわち「決められた金額で、条件がつけられた3つの異なるお土産を買う」場面を設定し、数学の問題を作成した。その後、比較表現を伴った英語での対話を成立させた。数学Aと英語コミュニケーションⅠとも、学校生活や日常において、既習内容(一次不定方程式・比較表現)を活用できると実感し、学習事項を運用できるようにすることを目指した。授業後のHIMAWARIルーブリック(クロスカリキュラム特別仕様)の感想から、生徒に文理融合による学びが起きており、数学と英語2つの教科に対して同時に興味や面白さを感じるという新しい価値の創出に繫がっていることがわかった。


授業で用いたPPT
授業プリント(数学英語

授業実践「日本史探究」×「数学A」



主題  「我等、算術ヲ以テ、此ノ橋ヲ 造レリ!」

-紀州の算額から江戸時代の和算を体感、地域の人々の声を読み解き、
【境界を越えた学び】「STEAM」教育で過去と未来をつなぐ一つの試み-

史料『すさみ町王子神社「算額」』(すさみ町立歴史民俗資料館蔵)

●授業者: 森田泰充(社会科),白樫和久(数学科),嶋本佑輝(数学科)
●対 象: 2年B組「地理歴史科(日本史探究)+数学科(数学A)」
●日 時: 令和6年2月1日(木)3・4時間目(50分×2時間)
●ねらい: STEAM教育の一番の価値は、生徒が自分の未来を見据えて、「この学習をすることには意味がある」と感じられることである。各教科を個別に学習していても、なぜそれを学ばなければならないのかわかりにくい。教科の知識が、現実の社会でどのように生かされているかが見えてくれば、どの学習も大切だと理解できると考える。これが、今回の大きなねらいである。
●概 要: 今回の授業では、高校2年B組生徒35名が、6人1組で、和歌山県西牟婁郡すさみ町王子神社に奉納された1枚の「算額」中の1題を手がかりに、元治2(1865)年、問瀛橋(とおみばし・現:遠見橋)の掛け替え工事に挑んだ人びとが「算術ヲ以テ」工事を成功させた事例を、「算額」という文字史料から読み解いた。
今回の教材理解につながる和算の「遺題継承」と「算額」について少しだけ補足したい。まず,吉田光由(1598~1672)はその著「塵劫記」に難問十二題(遺題)を載せ、力試しの問題として、世人に広くその解答を求めた。さらに、その遺題に解答を与え、自分も新たに出題するというリレー形式の問答、すなわち、「遺題継承」が始まったという。特に関孝和の修業時代は、まさにこの遺題の花盛りであり、数学発展の大きな刺激となったとされる。さらに、寛文の頃から神社仏閣の壁に数学の問題を絵馬にして掲げる風習が始まった。このことはわが国独特のもので、これを「算額」という。算額奉掲の最盛期は文化,文政の頃であったといわれている。つまり、「和算」の問題の解法は1つではなく、神社に集う諸人が、あれこれ解法を競い合うという知的好奇心を満たしてくれるものでもあったのである。
生徒たちには、江戸期の和算、3題を発問し、その水準の高さはもちろん、解法をグループで考えるという協働作業を通して、「算額」を奉納した人びとの想いを実感させた。
●生徒の振り返りから:
○ 日本の発達した数学ブームは明治維新から文明開化を進めるなかで、大きな基礎として日本の近代化へ発展を支えたのだと思います。数学ブームによる「和算」の発展なしでは、日本の急速な近代化への発展はなかったと思います。
○ ただ答えを見て納得するだけでなく、自身が新たな解法に取り組むことで、思考力が鍛えられた。また、自分で考える楽しさを学んだ。現代学んでいる数学も将来的にはどのように発展していくのだろうか、興味深く感じた。
○ すぐに答えを見ずに自分の力で執念深く計算し続けることで、数学の面白さが分かる。次の人に問題を継承するという文化はおもしろいと感じた。                (いずれも一部抜粋)
●今後の展望:
○ 度重なる洪水により橋の流出という被害に見舞われた問瀛橋(とおみばし・現:遠見橋)は、地元の人びとにより、アーチ型橋に掛け替えられた。大坂の住吉大社や天神橋の反橋のごとく、朱塗りされた新橋は、地域の人びとの誇りであったことは想像に難くない。この新橋掛け替えを教材とすることは、理科の「てこの原理」や数学の展開図などの知識、建築に関する知識・技術、環境に調和するデザインなど、さまざまな教科と関係している。このことからも、生徒が課題を発見し、問題解決していく主体的な学びにつながっていくことに期待している。
○ 日常生活において、既習の知識を繰り返し活用し、必要性を体感できる教科横断的な学びは、知識の定着にも役立つ。課題は指導方法である。決まったテキストはなく、地域課題に取り組むには視野の広さが求められる。教員や学校だけで取り組みではなく、博物館や、県市町村の文化財担当、大学と連携、国や自治体のウェブサイトで公開している資料を活用していくことが、今後の課題である。

 

▲ 授業の冒頭の一場面
(左:森田(日本史)、右:白樫(数学))

▲当日の資料等



授業実践「体育」×「生物」

●授業者:佐藤寛員(体育科),松下愉久教諭(理科)
●対象:2学年環境科学科「体育」×「生物」
●日時:令和6年2月1日(木)
●内容:「筋肉におけるATP供給機構を理解し、スポーツに応用できるようになる」
生物ではATP供給機構を学ぶが、その知識を活用できる機会は殆ど与えられていません。また、あらゆる競技において、ウォーミングアップは重要ですが、その理論的裏付けを体育の授業だけで網羅することは困難です。そこで本授業では、生物で学んだ代謝の知識を活用して、どのようなウォーミングアップを行えばよいかを理論的に考察することに主眼をおきました。また、班活動には「Class Notebook」を活用しました。
まず、細胞呼吸について復習し、クレアチンリン酸の分解によるATP供給法について学びました。次に、平成30年度の共通テスト試行調査の問題を題材に、1500m走における経時的なATP供給法の割合変化を理解しました。その上で、100m走のウォームアップ方法について班ごとに考える機会を与え、クレアチンリン酸の分解が、瞬発力を要するスポーツで重要であることを学びました。最後に、これらの知識を活用して、1500 mのウォーミングアップ方法を班ごとに対話しながら考案し、Class Notebook上で発表しました。
以下、生徒の感想です。「体育で行うウォーミングアップを理論的に学ぶことができた」「Class Notebookを班ごとに活用できて、スムーズに意見をまとめることができた」「生物で学ぶ理論を日常生活で活用したいと思った」「生物で現在学んでいることの応用だったので、スッと頭に入ってきた」

 

授業実践「社会」×「国語」

●授業者:小島欣幸教諭(社会科),佐治晃一教諭(国語科)
●対象:2年生環境科学科「社会」×「国語」
●日時:令和6年2月1日(木)
●内容:
文章表現は、歴史・地理的な背景など、様々な側面から多角的に分析することにより、より精微に鑑賞することができる。多角的な視点から文章を鑑賞する主体的な感受性を育成することを目的に、『史記』「鴻門之会」の一場面に焦点を当てて、授業を行った。
①国語パート 「鴻門の会」の該当箇所の書き下し文と現代語訳を確認。その後、プリントに「上手く想像できなかった場面」を書き出す作業をし、ペアで確認・交流した。
②社会パート 生徒は「則与一生彘肩。樊噲覆其盾於地、加彘肩上抜剣切而啗之。」の一文を絵に表し、この文章をどのくらい具体的に脳裏に描けているかを確認する。
その後、担当者から、中国古代の社会や食文化と照らし合わせると、「彘」・「彘肩」・「生彘肩」・「一生彘肩」という字・表現がどのように解釈できるのかという講義を受ける。
この講義の後、もう一度、上掲の一文を絵に表し、講義を聴く前と聴いた後で、どのように脳裏に描く光景が変化したのかを確認する。



授業実践「情報」×「数学」

●授業者:西林諒教諭(情報科),有田啓介教諭(数学科)
●対象:1年生普通科「情報」×「数学」
●日時:令和6年2月1日(木)
●内容:「Python(パイソン)を用いた数学的問題の解決とドローンへの応用」

情報と数学の教科横断型授業(クロスカリキュラム)を実施しました。1限目にはプログラミング言語Python(パイソン)を用いて数学的な問題(整数剰余についての問題、素数判定についての問題)の解決を試みました。Pythonのアルゴズムを学ぶとともに、生成AI「chat GPT」による応答を利用するだけでは、計算回数が必要以上に多くなってしまうことを学習しました。2限目にはPythonを用いたドローンプログラミングを実施し、ドローンの基本的な操作方法、初期設定を学とともに、スタートとゴールを教室内に設定しクリアを目指す、コース飛行にチャレンジしました。以下,生徒の感想です。『生成AIを用いて何かを学ぶ場合、自分のもつ知識と比較することや、生成AIの情報をうのみにしないことが大切だと感じた』『AIを使いこなせるように人間が学力を身に付ける必要性がることが理解できた』『パソコンに入力したプログラミングの情報がドローンに転送され動くのが楽しかった』『プログラミンを考えて、うまくドローンが飛行したときの嬉しさが半端なかった』『最新技術をたくさん使い、能動的に学習できました。最後まで飽きることなく楽しめました』
(下記QRコード:授業者が動画でドローンの初期設定を解説しています。)

授業で用いたPPTスライド



授業実践「英語」×「家庭」×「化学」

●授業者:山中淑尭教諭(英語科),川南ゆかり教諭(家庭科),谷地祐介教諭(理科)
●対象:2年生環境科学科「英語」×「家庭」×「化学」
●日時:【F組】令和6年2月1日(木),【G組】令和6年1月22日(月)
●内容:「マイクロプラスチック問題について,私たちができることは何か?」というテーマで教科等横断型授業を実施しました。授業内容の詳細は別添「学習指導略案」をご覧ください。授業の最後には「HIMAWARI」を用いて,振り返りを実施しました。Kizuku(①向上心(探究心)・②課題発見力),Yomu(⑥読解力(情報収集力)),Oshieau(⑦協働性・⑧課題解決力)はEフェーズ(応用)に到達することをねらっていました。結果,Eフェーズに到達した割合〔%〕は①97.4%,②31.6%,⑥38.2%,⑦48.7%,⑧56.6%となり,授業のさらなる改善の必要性を感じました。しかし,①はほとんどの生徒がEフェーズに到達し,教科等横断型授業の有用性を改めて実感じました。以下,生徒の感想です。
◇化学×家庭×英語の授業ってどんなのか,どういうつながりがあるのか不思議に思いながら受け始めました。実際,つながりを強く感じる部分もあり,おもしろかったです。
◇一つの英文から読み取れた「Why?」を家庭,化学の視点から捉えることができて,その文章への理解が深まりました。表面的に文章を読み取るのではなく,本質に近いところまで読み取り,自らの意見をもつことができると楽しく学ぶことができると思いました。
◇英語×家庭×化学という一見つながりがなさそうな授業でも,しっかり結びついていたのがおもしろかったです。こんな授業が増えてほしいと思った。
◇教科を超えた授業が初めてだったので,始まる前から楽しみにしていた。1つの物事を3つの視点から見ることができた。
◇課題研究でマイクロプラスチックをしてもおもしろかったと思う。このような授業を高1のはじめや中3などに行うことで課題研究のテーマ設定につながると思った。


指導略案

HIMAWARI


授業実践「理数化学」×「コミュニケーション英語Ⅱ」

●授業者:三龍直子教諭(英語科),谷地祐介教諭(理科)
●対象:2年生環境科学科「理数化学」×「コミュニケーション英語Ⅱ」
●日時:令和5年3月14日(火)~15日(水)
●内容:英語と化学の教科横断型授業(クロスカリキュラム)兼探究型授業を実施しました。英語の教材の中で取り上げたメタン(methane)や硫化水素(hydrogen sulfide),バクテリア(bacteria)について,身のまわりの生活と関連づけて調査を行いました。授業の目標は以下の3点です。
(1)英語での既習内容(既習語彙)をもとに,さらに化学の専門知識(日本語)を使って,内容を深め,英語で表現する。
(2)理科での既習内容を日常生活と関連づけることで,化学物質について理解を深める。
(3)科学コミュニケーション力を育む。科学の専門知識がない一般の人あるいは小学生が理解できる内容で説明できるようになる。
各班に分かれ,1人1台PCを用いて調査を行い,英語の手書きのスライドを作成しました。作成過程では原則,日本語は禁止で,英語でやり取りを行いました。発表は各班の持ち時間3分のAll Englishで行いました。誰でもわかる英語で発表をしようと努力している生徒の姿が印象的でした。オーディエンスはEvaluation Sheetをもとに評価し,話し合いの末,投票を行い,No.1の班を決定しました。授業の最後には【HIMAWARI~向陽ICEルーブリック~】を用いて,振り返りを実施しました。以下,生徒の感想です。『思ったよりも学校で習った化学の物質が自分達の日常生活に絡んでいることを知った。』『英語への理解に加えて,化学についての知識も得ることができ,両方の力をつけることができた。』『もう少し準備の時間がほしいと思っていましたが,みんなのクオリティーが高くてびっくりしました。化学×英語,楽しかったです!』『英語と化学の組み合わせが新鮮だった。』『英語でのプレゼンは絵や図表があるほうがわかりやすいと思った。専門用語を簡単な英語で表現することの難しさがよく分かった。』

授業メモ

生徒が作成したスライド例

Evaluation Sheet

HIMAWARI


授業実践「数学」×「歴史総合」

●授業者:森田泰充教諭(地理歴史科)、有田啓介教諭(数学科)
●対象:1年生普通科「教科横断的な学習(クロスカリキュラム)」
●日時:令和4年9月20日(火)
●内容:江戸時代 なぜ数学がブームになった?
 江戸時代の「和算」や「算額」をキーワードに、地理歴史科と数学科の教諭2人により「教科横断的な学習(クロスカリキュラム)の授業」(50分・1時間)を実施しました。『明治からの近代国家形成や文明開化の推進力の背景には、江戸時代の「和算」をとおして「遺題継承」という数学へ探究心と熱意と努力によって成し遂げられたことがわかりました。』(生徒感想より)この授業では、歴史を学ぶとともに、実際に算額となった平面幾何についての問題もグループワークで考えました。江戸時代の数学の水準の高さを実感し、各教科の単独授業では味わえないワクワク感と主体的・対話的で深い学びができた1時間でした。