仮説と検証

 コロンブスがアメリカ大陸を発見したのは、1492年10月12日のことでしたが、未知の大陸を発見しようと思っていた訳ではありません。当時、「地球は丸い」という考えが 一般に普及しはじめ、コロンブスもその考えに沿って、今までの航路と逆回りに進めばインドにたどり着くという仮説のもとに航海を行った結果、アメリカ大陸にたどりついたのです。(正確には今のバハマ諸島の一つです。)彼自身は、死ぬまでそこをインドの東側だと思っていたと言います。
 つまり、彼は最初に立てた仮説を証明するために航海を行い、その仮説が正しければ起こるであろう結果が起こったと見て、新大陸をインドの東側だと信じてしまったということだと思います。
 これは研究活動をする際には、本当に気をつけなければならないことで、表面的には正しく思えた結果が、実は全く異なる未知の要素によってもたらされたものであるということがよくあります。研究者は自分の立てた仮説に対する結果が、実は異なる要因による結果であったと考え直すことはなかなか難しいことで、ですから、様々な角度からの検証ということが必要になってきます。
 コロンブスの場合、仮説自体は正しかったわけで、そこに新大陸の存在という当時としては全く未知の要素があるとは考えもしなかったのでしょう。そこにコロンブスの悲劇があります。
 結局、このバハマ諸島を含む大陸がそれまで発見されていなかった新大陸であることを主張したのは、アメリゴ・ベスプッチで、それにちなんでアメリカ大陸という名前が生まれました。さらに、南北アメリカが一つの大陸であることがわかったのは、コロンブスの発見から20年以上経ってからのことです。
 当時の事情は分かりませんが、コロンブスがさらに何度か探検して新大陸であることが分かったならば、アメリカ大陸ではなく、コロンビア(コロンブスの地という意味)大陸と呼ばれていたかもしれませんね。

2021年03月17日